AI(人工知能)、ロボット、IoT(モノのインターネット)、自動運転、再生医療。
今後の世界を確実に変えていく最先端テクノロジーを分析し、その中から選りすぐりの数十種を毎年発表しているのが、米Gartner社の「ハイプサイクル」です。
ハイプサイクル
ハイプサイクルとは、特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図です。
米調査会社のGartner社は、数多くの最新テクノロジーの中でもさらに厳選して、年に一度、この図にプロットしています。
ハイプサイクルは次の5つの段階に分かれています。
引用元:ガートナージャパン
黎明期:新製品発表やその他のイベントが報道され、関心が高まったブレークスルーの引き金となった段階
「過度な期待」のピーク期:世間の注目が大きくなり、過度の興奮と非現実的な期待が生じる段階
幻滅期:過度な期待に応えられず急速に関心が失われ、メディアがその話題や技術を取り上げなくなる段階
啓蒙活動期:メディアで取り上げられなくなった一方で、啓蒙し続け、利点と適用方法が理解されるようになる段階
生産性の安定期:広範に宣伝され受け入れられるようになり、徐々に安定し、第二世代、第三世代へと進化していく段階
2018年版として、ガートナー社から発表されたものが以下になります。
引用元:ガートナー社
◆◆◆幻滅期◆◆◆
- 拡張現実(AR)
- スマート・ファブリック
- 複合現実(MR)
- 自律走行(レベル4)
- コネクテッド・ホーム
- ブロックチェーン
◆◆◆「過度な期待」のピーク期◆◆◆
- シリコン負極電池
- 仮想アシスタント
- IoTプラットフォーム
- カーボン・ナノチューブ
- ディープ・ニューラル・ネット(ディープ・ラーニング)
- デジタル・ツイン
- バイオチップ
- スマート・ワークスペース
- ブレイン・コンピュータ・インタフェース
- 自律モバイル・ロボット
- スマート・ロボット
- ディープ・ニューラル・ネットワーク向けASIC
- AI PaaS
◆◆◆黎明期◆◆◆
- 量子コンピューティング
- 5G
- 立体ホログラフィック・ディスプレイ
- 自己修復システム・テクノロジ
- 会話型AIプラットフォーム
- 自律走行(レベル5)
- エッジAI
- エクソスケルトン(外骨格)
- ブロックチェーンによるデータ・セキュリティ
- ニューロモルフィック・ハードウェア
- ナレッジ・グラフ
- 4Dプリンティング
- 汎用AI
- スマート・ダスト
- 空飛ぶ自律走行車
- バイオ技術(培養組織 / 人工生体組織)
※以下の、ガートナー社の分類を参考に色分け
1 AIの民主化
2 エコシステムのデジタル化
3 DIY(自己流)バイオハッキング
4 透過的なイマーシブ・スペース
5 ユビキタスなインフラストラクチャ
2017年と比べると、VR(Virtual Reality)、RPA(Robotic Process Automation)等がなくなっているのが印象的です。
今回、2018年のハイプサイクルに登場している、全35種類の最新テクノロジーについて、概要を解説します!
幻滅期
過度な期待に応えられず急速に関心が失われ、メディアがその話題や技術を取り上げなくなる段階です。
該当する最先端テクノロジーは6つ。(ブロックチェーンは幻滅期とピーク期の境目)
拡張現実(AR)
「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と訳されます。
VR(Virtual Reality)は視界が全て異空間になる「仮想現実」ですが、ARは、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を「仮想的に拡張する」ものになります。
スマホでできる簡単なARの代表例は「ポケモンGO」「IKEAカタログ」「Google翻訳のWord Lens機能」などがあります。
引用元:Niantic Labs
また、ARは産業用にも適していて、倉庫作業内でのピッキングなどでの利用も期待されています。
スマート・ファブリック
衣服に極小な半導体やセンサーを組み込んだ布地を使った衣服で、心拍や心電などをモニタリングして、医療の情報とリンクするなど、テクノロジーを使った衣服のことです。
「着る(ウェアラブル)コンピュータ)」とも言います。
例えば、以下は「外気に合わせて温度調節できるTシャツ」です。
引用元:POLAR SEAL (kickstarter.com)
他には、以下のようなものもあります。
- 着用した人の汗から収集したデータを解析し、体温や心拍数、発汗状態などを測定
- 病院の入院患者用の病衣にして、自動的に投薬を行う
- スポーツ時に関節角度を記録し、理想のフォーム作りに活用
複合現実(MR)
「Mixed Reality」の略で、一般的に「複合現実」と訳されます。
仮想世界と現実世界の情報を組み合わせて、仮想世界と現実世界を融合させる技術です。
ARとの違いがわかりづらいですが、ARとは逆の発想で、主眼はデジタル空間に置かれており、カメラなどを通して受け取った現実世界の情報をデジタル空間上に反映していくものになります。
マイクロソフトの「Hololens」やMagic Leapの「Magic Leap One」が有名なMRゴーグルです。
※追記 2019/2/24、米Microsoftから、新型のMR用ヘッドマウントディスプレー「HoloLens 2」を2019年内に発売すると発表がありました。
自律走行(レベル4)
自動運転(=自律走行)と聞くと、「人が乗らなくてもOK」というイメージを持つかもしれませんが、自動運転にはレベルがあります。
自動運転のレベル分けは以下になります。
- レベル0:運転自動化が全くない
- レベル1:ハンドル操作や運転の加速・減速などのいずれかを車がサポート
- レベル2:ハンドル操作と運転の加速・減速などの複数を車がサポート
- レベル3:車が本格的な自動運転をしてくれるが、緊急時はドライバーが必要。交通量が少ない、天候や視界がよいなどの環境の条件が整っていることも必要。
- レベル4:ドライバーが乗らなくてOK。ただし、交通量が少ない、天候や視界がよいなど、運転しやすい環境が整っていることが必要。
- レベル5:どのような条件下でも、自律的に自動走行をしてくれる車
レベル4は、ドライバーが乗らなくても良い本格的な自動運転ですが、運転しやすい条件の時のみとなります。
レベル3までは市販車がありますが、レベル4はまだありません。
欧米の自動車メーカーは2020年前後に「レベル4」搭載車の市場投入を表明しています。
さらに詳しくはコチラ。(2018年6月最新状況)
*追記:中国のインターネット検索大手、百度(バイドゥ)は2018/7/4、「レベル4」の自動運転技術を搭載している自動運転バス「アポロン(Apolong)」の量産を開始した。
(引用元:Forbes)
コネクテッド・ホーム
ホームオートメーションに「モノのインターネット(IoT)」を取り入れ、家の中の機器がインターネットと無線通信で接続され、スマートフォンなどの端末によって外出先からでも遠隔操作が可能なシステム、もしくはそのような家のことです。
引用元:IoTニュース
ブロックチェーン
分散型台帳技術(分散型台帳を実現する技術)です。
台帳とは帳簿や通帳のようなもの。通常の通帳と違い、分散型台帳には次のような特徴があります。
- 今までの世界中の全ての取引を記録している
- みんなで使える
- みんなで管理・監視する
ブロックチェーンが使われている代表例であるビットコインは、2009/1/3に誕生して以来、全ての取引を記録しています。
通常の通帳は、銀行と預金者しか使えませんが、ブロックチェーンの台帳は、インターネットに繋がっていれば、誰でも使うことができます。
引用元:経済産業省
ブロックチェーンの強みを一言で言うと「低コストで、信頼できる情報をやり取り(記録)できること」です。
ブロックチェーンの活用先には、例えば以下のようなものがあります。
- 不動産の登記
- 食物の経路追跡
- 個人認証
- 特許管理
- デジタルコンテンツ管理
国連でも、難民であることを証明するためにブロックチェーンを使ったプロジェクトが進行しています。また、各暗号通貨に代表されるような、様々なブロックチェーンを使ったプロジェクトが誕生しています。
※暗号通貨関連記事はこちら
「過度な期待」のピーク期
世間の注目が大きくなり、過度の興奮と非現実的な期待が生じる段階です。ここの段階で多くは失敗に終わると言われています。ここに該当する先端テクノロジーは13あります。
シリコン負極電池
現在「リチウムイオン電池」が、携帯電話、ノートパソコン、タブレット端末や電気自動車などに多く採用されています。これは、90年代に登場した新しい電池で、軽量でありながら、高電圧・大電力で、自己放電率が少なく、大変優れているため、今後も市場規模の拡大が予想されています。
電気自動車用のリチウムイオン電池(引用元:NISSAN)
典型的なリチウムイオン電池用の負極材料であるグラファイトは、最先端の電気自動車などに求められるエネルギー需要を満たすことができません。
しかしシリコンは、以下3つの理由から、リチウムイオン電池の負極材料として最も有望とされています。
- 既知の材料の中で最も高い容量を有する
- 比較的低い作動電位を示す
- Si 元素は天然に豊富に存在し、環境に優しい
最近では、「国立研究開発法人 物質・材料研究機構」が、ナノ多孔構造を導入したアモルファス・シリコン負極膜が安定かつ高容量で動作することを見出すなど、研究が進んでいます。
(内容参考:SIGMA-ALDRICH)
仮想アシスタント
AIアシスタントとも呼ばれ、個人のタスクまたはサービスを実行できるソフトウェアエージェントです。仮想の秘書のような存在です。
仮想アシスタントの例として、Amazonの「Alexa」、Googleの「Google Assistant」、Appleの「Siri」、Microsoftの「Cortana」など。
《参考》Alexaが導入された最新モデルの「Amazon Echo」
IoTプラットフォーム
IoT(Internet of Things)、つまり「モノのインターネット」とは、様々な「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みのこと。
現在、インターネットに繋がっているモノは、PC、スマホ、テレビ、ゲーム機など限られていますが、今後は、身の回りのありとあらゆるモノがインターネットに繋がっていきます。
「IoTプラットフォーム」は、IoT活用に必要なさまざまな機能を提供するサービス全体を指します。
ハードウェア・ソフトウェア・ネットワーク・クラウドインフラなどを組み合わせた統合システムで、個別にシステム構築するよりも時間やコストを抑えることが可能です。
IoTプラットフォームの主な役割としては以下です。
- デバイスマネジメント
- デバイスからデータを収集&保存
- データの可視化
- データの分析
世界各社の代表事例として、
米GE社の「Predix Platform」、米Amazonの「AWS IoT」、日立製作所の「Lumada」、英Armの「Pelion IoT Platform」などがあります。
IoTプラットフォームについて、より詳細な解説はコチラを参照。
カーボン・ナノチューブ
軽量でありながら、強度は鋼の20倍、熱伝導性は銅の10倍、電気伝導性は銅の1000倍と、極めて優れた素材として注目されています。
その名の通り、炭素原子同士が蜂の巣状に結合し、チューブ(筒)状になった構造をしています。
電線や電池の電極などへの活用事例があります。
日本ゼオン㈱が、2015年11月に量産工場を完成させ、稼働しているとのことです。
ディープ・ニューラル・ネット(ディープ・ラーニング)
ディープ・ニューラル・ネット(DNN)とは、十分なデータ量があれば、人間の力なしに機械が自動的にデータから特徴を抽出してくれるというもので、人間や動物の脳神経回路をモデルとしたアルゴリズムを多層構造化しています。
引用元:Albert
そして、ディープ・ラーニング(深層学習)とは、DNNを用いた学習のことになります。
2013年以降は第3次AIブームと言われ、このブームの牽引役が「ディープ・ラーニング」です。
チェスや将棋と比べてパターンが圧倒的に多い「囲碁」においては、人工知能が人間に勝利するまであと10年はかかると言われていましたが、AIの囲碁プログラム「AlphaGo 」は、ディープ・ラーニングを採用することで、2016年、世界トップ棋士をも打ち破りました。
引用元:DeepMind
人間がプログラムした通りにだけ動いていたコンピュータが、自ら学び、ノウハウを習得していくようになったというポイントが大きいです。
人間には休息が必要ですが、コンピュータは24時間365日学習を続けられます。また、感情的な動物である人間に比べ、コンピュータは、最も合理的かつ効果的な手法を導き出します。
ディープ・ラーニングによって、医師が見つけられない癌(ガン)をAIが見つけたり、ゴッホ風などといった著名な画家風の絵をAIが描けるようになったり、社会の至るところでこの技術が応用されています。
デジタル・ツイン
現実世界にある製品の実際の動きや振る舞いをセンサーデータとして取得し、デジタル上にある製品と連携させ、動きや振る舞いを完全にコピーするという手法です。
IoTを設計に活用するために使われます。
引用元:PTCジャパン
現実世界のコピー元とデジタル世界のコピー先があたかも”双子”のようであることから、このような名前がついています。
これにより、実際の製品を観察するだけでは不明瞭であった事象が、デジタルの世界で解き明かせるようになります。
開発のコスト削減に貢献する点がメリットとなります。
ゼネラル・エレクトリック(GE)社では、飛行機の飛行データやエンジンの詳細なデータ、粉塵などのデータをIoT技術で収集してデジタルツインを構築することで、エンジンのオーバーホールの適切時期での実施を実現しコストの削減を図るなど、デジタルツインの採用に意欲的です。
バイオチップ
バイオ分子(DNA、たんぱく質、糖鎖)を基板上に多数固定したもので、チップ上のバイオ分子と特異的に相互作用する標的分子や化合物などを、大量かつ同時並行的に検出できるデバイスです。「生物素子」とも言います。
以下の4種類が代表例となります。
- DNAチップ(DNAマイクロアレイ):遺伝子配列や遺伝子発現状態の解析に使用
- プロテインチップ:蛋白質と相互作用する分子の解析に使用
- 糖鎖チップ:糖鎖と相互作用する分子の解析に使用
- 細胞チップ
特に、簡便かつ迅速に複数の標的遺伝子を同時検査することのできる新しい検査・診断デバイスとして、「DNAチップ」が注目を浴びています。
スマート・ワークスペース
個人スペースと仕事スペースの壁がなくなりつつあり、フレキシブルで、全社員のニーズに対応できる職場のことです。求職者がその一員になってみたいと感じるような、エネルギーのあふれる環境です。
「自分の時間をどのように、どこで使うか自由に選択したい」と考える求職者が増えている昨今では、職場環境に関しての会社の取り組みは重要です。
社員が会社のデータにどこからでもアクセスできるようにしたり、人の気配がなくなると自動的に消えるスマート照明などのセンサーを設置したり、IoTやテレワークなど、様々な最新テクノロジーと合わせて実現されます。
(内容参考:lifehacker)
ブレイン・コンピュータ・インタフェース
人間の『脳波』を解析し、何かしらの『動作』に変換することです。
一般的には、機械を操作する時、コントローラを使ったり、PCやスマートフォンなどのデバイスを使います。しかし、ブレイン・コンピュータ・インタフェースの場合、例えば、「左に進め」などと頭でイメージした「脳波」によって操作します。
引用元:Qiita
現在、特に医療現場での採用が進んでおり、体が思うように動かせない難病患者の意思疎通を手助けしたり、脳卒中の後遺症で手足が不自由な患者のリハビリに活用されています。
引用元:NIKKEI STYLE
自律モバイル・ロボット
人が操作しなくても、自律して走行し、役割を果たすロボットです。倉庫など物流での採用が進んでいます。
オムロン社の自律モバイルロボット(引用元:日経 xTECH – 日経BP)
こちらは自分で作成した地図を頼りに自律走行しながら、物を運搬します。リリース以来、自動車や電子部品、食品・医療品など様々な業界のモノづくり現場で導入検討が進んでいるとのことです。
スマート・ロボット
インターネットなどに接続されて、クラウド上でも情報処理を行うロボットです。IoTやAI技術の発展や、通信速度の高速化などにより、盛り上がっています。
スマートロボットは、産業用ロボットとサービスロボットの大きく2つに分類されます。
“産業用ロボット”の主な活用分野:製造ラインの各工程(溶接、塗装、組立、搬送等)
“サービスロボット”の主な活用分野:モビリティ、医療・介護、セキュリティ、清掃、インフラ、コミュニケーション
ファナックの産業用スマートロボット(引用元:MONOist)
サービスロボットは非常に多彩で、各ジャンルの代表的なものを以下に挙げます。
- モビリティ:WHILLのパーソナルモビリティ
- 医療:Intuitive Surgicalの手術ロボット
- パワーアシスト:CYBERDYNEの医療用ロボットスーツ
- セキュリティ:ALSOKの警備ロボット
- 掃除:iRobotの掃除ロボット
- インフラ:トピー工業の災害救助ロボット
- コミュニケーション:ソフトバンクロボティクスの受付・案内ロボット
- 教育:AKAの英語教育ロボット
日本のスマートロボット市場についての詳細はJETROのマーケットレポートを参照。
ディープ・ニューラル・ネットワーク向けASIC
「ASIC」とは、「Application Specific Integrated Circuit」の略で、特定の目的のためにつくられた集積回路です。
例えば、パソコン全体の処理装置である「CPU」や、画像処理装置である「GPU」は、様々な用途で使用できますが、ASICは基本的に用途は1つです。その目的においては、CPUやGPUよりも圧倒的に高い性能を誇ります。
前述した、ディープ・ニューラル・ネットワーク専用の目的で作られたASICということですね。
Googleが開発した、ディープ・ラーニング専用ASICである「TPU」が搭載されたボード(引用元:Google)
他にも、仮想通貨のマイニングでも、マイニング専用のASICが使われています。
AI PaaS
まず、以下の4つのパブリッククラウド用語の説明から。
- IaaS(Infrastructure as a Service):インフラの提供
- SaaS(Software as a Service):ソフトウェアの提供
- PaaS(Platform as a Service):プラットフォームの提供
- DaaS(Desktop as a Service):デスクトップの提供
PaaSの代表例は、AWS(Amazon Web Service)、Microsoft Azure、Google App Engine(Google Cloud Platform)、IBM Bluemixなどです。
要するに「AI PaaS」とは、
AI開発のプラットフォーム(基盤)として利用することを想定して、クラウドを提供することです。
ここ1〜2年で、AIやブロックチェーンを簡単に利用できる機能がPaaSに加わってきています。
※関連動画
AI PaaSのシェアをはじめ、大きな影響力を持っている「GAFAM(Google, Apple, facebook, Amazon, Microsoft)」の収益構造の分析はこちら。
黎明期
新製品発表やその他のイベントが報道され、関心が高まったブレークスルーの引き金となった段階です。
黎明期というだけあって、実用化までは遠いものも多いですが、まさに社会的インパクトをもたらしうる”夢の技術”ばかりです。該当する先端テクノロジーは16個。
量子コンピューティング
現在世にあるPCの中でも最高のスペックを誇る、スーパーコンピューターの1億倍の処理能力、かつ500分の1の消費電力という、とてつもない性能を誇るコンピュータです。
アメリカ、中国、ヨーロッパなどの各国が年間数百億円規模の開発費を投じています。
現在広く使われているRSA暗号や楕円曲線暗号は、ある程度性能の高い量子コンピュータを使うことで、簡単に解読できることが数学的に証明されています。
その対策として、近年、量子コンピュータ耐性をもった暗号技術がどんどん考案されています。
ブロックチェーンの安全性は、量子コンピュータによって破られる可能性があることから、仮想通貨でも、近年「DAG」という量子コンピュータ耐性のある基盤技術が導入されたりしています。
通常のコンピューターは、あらゆる情報を0と1の数字に置き換え、1文字ずつ処理していきますが、量子コンピューターは、量子状態に特有の性質を生かし、0と1を重ね合わせて並行処理するため、飛躍的にスピードが上がるという仕組みです。
2011年にカナダのスタートアップ、Dウェーブ・システムズが、世界で初めて商用化しましたが、これは「特化型」と呼ばれる、ある問題の解決に絞ったものです。
D-Waveの特化型量子コンピュータ(引用元:日経×TECH)
従来のコンピュータに置き換えられ、社会に莫大なインパクトを発生させる「汎用型」の量子コンピュータは、まだ実用化されていません。
汎用型の量子コンピュータ開発はGoogleやIBMが取り組んでいますが、まだまだ実用化には遠いのが現状です。
IBMが開発中の量子コンピュータ「IBMQ」(引用元:IBM Research)
※追記 2019/1/9、IBMから、世界初の単体で動作する汎用量子コンピュータ「Q System One」の発表がありました。
5G
「5G(ファイブジー)」とは、第5世代移動通信システムのこと。現行の4Gに続く、次世代の通信規格です。
通信速度は最大10Gビット/秒超と、4G(2010年当時)に比べて100倍以上に高速化します。また、1ミリ秒以下の遅延という、LTEの10分の1以下の低遅延が実現します。
引用元:IT media
このような5Gの高性能を活かして、4Kや8Kの高精細映像の配信、VR・AR・MRの視聴やライブストリーミング、ロボットや建機の遠隔操作、遠隔医療、IoT、自動運転などへの活用が期待されます。応用範囲が非常に広く、他の最先端テクノロジーが効果を発揮するためのインフラ基盤となります。
日本では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が5Gの研究開発に力を入れています。
世界の中でも高度な通信環境を持つ日本で、東京オリンピックが5Gの最大のショーケースとなると言われています。
立体ホログラフィック・ディスプレイ
ホログラムを再生するためのディスプレイ機器です。
立体ホログラフィック・ディスプレイ(引用元:シネ・フォーカス)
ホログラムとは、三次元の立体映像のことです。
プロジェクションマッピングとの違いは、モノに投影しなくても立体的に映像を再生できる点。
VR/ARはデバイスを装着して立体映像を見られますが、ホログラムはデバイスなしで見られる点に違いがあります。
現在はまだ、SF映画のようなホログラムまでは技術が追いついておらず、“擬似ホログラム”というのが最新テクノロジーになります。
擬似ホログラムは、3D空間(現実世界)に、2Dの高画質CGを投影することで、限りなく3Dに近い“2.5次元の世界”を表現する技術です。以下の映像を参考にしてください。
自己修復システム・テクノロジ
システムやトランザクション、ビジネスプロセスにおけるオペレーション上の問題を、トラブルが発生する前あるいは発生後に検出して、自動的に修復アクションを実行するものです。
例えば、IBM XIV Storage Systemは、誤動作に対処し、数分でシステム内の完全なデータ冗長性を自動復元する自己修復メカニズムが組み込まれています。
会話型AIプラットフォーム
相手の意図を解釈する作業は、ユーザーの代わりにコンピュータが担うようになります。
会話型プラットフォームは、ユーザーから質問や命令を受け取り、何らかの機能を実行したり、コンテンツを提示したり、さらには情報を求めたりすることで応答します。
ガートナー リサーチのリサーチディレクター、マグナス・レヴァン氏によると、会話型AIプラットフォームは以下の5つに分類されます。
- VPA(仮想パーソナルアシスタント):前述の仮想アシスタントに該当
- VCA(仮想顧客アシスタント):コールセンターなどでの企業の顧客サポート支援
- VEA(仮想従業員アシスタント):企業の従業員がシステムを使うサポート
- チャットボット:特定のユースケースに特化したシンプルなもの
- 人間とやり取りのないボット:他のボットやアシスタントに話しかけるようなもの
引用元:Gartner社
(内容参考:ビジネス+IT)
自律走行(レベル5)
自動運転のレベル分けは以下になります。
- レベル0:運転自動化が全くない
- レベル1:ハンドル操作や運転の加速・減速などのいずれかを車がサポート
- レベル2:ハンドル操作と運転の加速・減速などの複数を車がサポート
- レベル3:車が本格的な自動運転をしてくれるが、緊急時はドライバーが必要。交通量が少ない、天候や視界がよいなどの環境の条件が整っていることも必要。
- レベル4:ドライバーが乗らなくてOK。ただし、交通量が少ない、天候や視界がよいなど、運転しやすい環境が整っていることが必要。
- レベル5:どのような条件下でも、自律的に自動走行をしてくれる車
天気の良い日や、交通の単純な高速道路などだけではなく、雨や悪天候の日、渋滞して歩行者も多い一般道などでも完全に自動運転してくれるという、まさに”夢の車”です。
2017年頃から、世界中の企業が製品のコンセプト発表をしており、
発売予定時期については、ジェネラル・モーターズから2019年、BMWから2021年、アウディから2027年以降、フォルクスワーゲンから時期未定、NEVSから時期未定となっています。
エッジAI
エッジとは英語で”先端”という意味で、クラウドの反対側にあるという意味で使われていて、PC/スマートフォン/タブレット、ロボット、自動車といった「クラウドに接続して利用する端末側」のことを言います。
現在のAIは、クラウド側にAIエンジンが置かれいるため、データをエッジ側からアップロードして処理する仕組みです。Siriなどのスマートフォンの音声認識で、少し待たされることがあるのはクラウド側とのやり取りが発生するためです。
音声認識であれば、待てばいいかもしれませんが、自動運転などでは遅延は事故の原因となります。このような問題の解決手段として、エッジ側にもAIを搭載し、エッジ側である程度の処理をした上で、必要な部分だけをクラウドへアップロードする、というような仕組みがエッジAIになります。
エッジ向けのAI用半導体チップ(SoC)として、NVIDIAから「Tegraシリーズ」、Qualcommから「Snapdragon 835」などが発売され始めています。
エクソスケルトン(外骨格)
人体に装着される電動アクチュエーターや人工筋肉などの動力を用いた、外骨格型、あるいは衣服型の装置のこと。
英語では一般的に「powered exoskeleton(強化外骨格)」、日本語では「パワードスーツ」の方がお馴染み。
アメリカの軍需企業Raytheon Sarcos社の「XOS 2」(引用元:サルコス社)
軍需産業の他に、医療や介護などの業界でも開発が進んでいます。
フランスのECA社が開発した、医療用のエクソスケルトン(引用元:ECA Group)
ブロックチェーンによるデータ・セキュリティ
ブロックチェーンの個々のブロック内の取引記録にはデジタル署名が付与されており、更新および削除することはできません。また近年、DDoS攻撃などが頻繁に発生していますが、ブロックチェーンは、参加者が分散してデータを保持していることから単一のセキュリティ障害点がなく、こうした攻撃手法のリスクを軽減することが可能です。
特に今後のIoT社会では、セキュリティは今までにも増して重要です。例えば、車などの乗り物もIoT化するため、仮にハッキングされるとテロにも繋がります。家中の家電がハッキングされてウイルスなどを送り込まれると、まともな日常生活が送れなくなってしまいます。
暗号化技術によってIoTデバイスと安全な通信ができるブロックチェーンは、ビットコインなどの暗号通貨のみならず、セキュリティ面での活用も期待されています。
ブロックチェーンについては前述。
ニューロモルフィック・ハードウェア
脳のニューロンとシナプスの構造を模したコンピューターチップです。
人の脳は、約1000億個にも上る「ニューロン」と、それらが接合する「シナプス」からなる複雑で巨大なネットワークです。ニューロンはシナプスを通じて化学的信号をやりとりして情報を処理します。
引用元:MST エムエスツデー
通常のコンピュータでは、プロセッサーが非常に高周波で動いていて、使っていない時にも電力を消費し、結果として大きく電力を消費します。
それに対して、ニューロモルフィックの場合、人間の脳のシナプスとニューロンの関係のように、刺激があった時にだけ、スイッチがオンになるというタイプで、今までの1000倍以上の省電力が実現できるとのことです。
ナレッジ・グラフ
Googleの持つテクノロジーの一つで、検索結果に、検索キーワードに関する情報をまとめて表示することです。
人物や作品、場所などあらゆる物事について、それぞれの情報の関係性や属性を認識、把握したうえで、それを反映した検索結果を表示します。
検索エンジンの利用者が他のサイトを見て回り自分で情報を収集・整理しなくても、疑問を解決できるようにすることが目的です。
ナレッジ・グラフは、Googleの検索結果において、パソコンでは基本的に画面右側に表示されます。
上図の赤枠で囲っている箇所になります。
単なるテキスト情報だけではなく、画像や地図、他の人が検索している情報なども表示され、あらゆる角度から情報を伝えてくれます。
4Dプリンティング
時間の経過とともにひとりでに組み上がる部品、あるいは環境との相互作用によって形状が変化するオブジェクトを造形することです。
3次元の空間的座標軸に加えて、4つめの次元として「時間軸」をも考慮していることが、4Dと名付けられた理由です。
オブジェクトを造形する時に使う素材には、時間の経過や環境との相互作用によって形状が変化する性質を持つように設計されたモノが用いられます。
上図の例では、一番上の紐のような状態から、自動で徐々に変化し、最後には立方体の形になりました。(引用元:MIT 2013)
4Dプリンティングの実用例として、ヒトの食道のように収縮と弛緩をして、流水量を自己調節できる水道管が挙げられています。この水道管は、流水量が少ない時は細くなり、反対に多い時は太くなります。
他にも、光が当たると組み立てを自動で行なってくれる家具などの応用もできるかもしれません。
4Dプリンティング研究の第一人者である、スカイラー・ティビッツ氏が2013年にTEDで発表した時の動画がコチラです。
8分程と短く、和訳付きの動画なので、ぜひ見てみてください。
汎用AI
AIを大きく2つに分けると、「強いAI」と「弱いAI」に分かれます。
強いAIとは、人間の知能や心の原理を解明し、人間のように自意識や感情を持ち合わせているもの。わかりやすく言えば、ドラえもん。
弱いAIとは、人間のような自意識を備えておらず、限られた知性的な処理だけを行える、あくまで「機械的」な存在。
そして、弱いAIの中で、「特価型AI」と「汎用型AI」に分かれます。
特化型AIとは、特定の決まった作業に専門化して稼働するAIのこと。
汎用型AIとは、特定の用途や目的に限定せず、自律的に思考・学習・判断・行動するAIのこと。
前述した、AlphaGoは、碁を打つ機能のみに特化した、特化型のAIです。現在実用化されているAIは、自動運転技術、画像認識、会話など、一つの用途に特化しているものがほとんどです。
広い適用範囲を持つ汎用型AIは、最近では、国立情報学研究所などが開発した「東ロボくん」がAIによる東京大学の入試合格を目指してきましたが、2016年、東大合格を断念することが発表されました。国語の問題などで、問題文を理解する読解力に限界があったとのことです。
東ロボくん(引用元:DENSO)
AIが得意なジャンルに特化した場合、既に人間を超えたパフォーマンスを発揮しますが、全体的な知能や応用力としては、まだ3歳児にも満たないレベルと言われており、汎用AIの実用化にはまだ時間がかかりそうです。
※関連動画
AIで置き換えられないスキルランキング《TOP 20》
スマート・ダスト
米粒よりも小さなセンサーを世界中にばらまき、都市、自然、個人のデータを収集して役立てようというもの。光、温度、振動、磁気、化学物質等、センサーで取れるデータが収集の対象となります。
スマート・ダストは、1990年代に米国の研究機関で提唱された考え方であり、20年以上ずっと黎明期に分類されているようなものですが、IoTと共に徐々に実用化へと近づいてきており、農業から医療まで、幅広い分野への応用が期待されています。
例えば、体内に仕込むことで内部の神経や筋肉、内臓をリアルタイムでモニターできます(引用元:readwrite)
空飛ぶ自律走行車
航空機とドローン(小型無人機)の間に位置付けられ、空を飛ぶ自動運転車です。次世代の移動手段として期待されています。
空飛ぶ車のイメージ(引用元:時事ドットコム)
アストンマーチン、オープナー、サムスン・モーターズ、テレフギアなど、世界中の会社が空飛ぶ車の開発に取り組んでいます。
世界中の「空飛ぶ車」まとめ(参考:MOBY)
日本でも、2018年8月、経済産業省が「空飛ぶ車」の実現に向けた官民協議会を設立すると発表したり、トヨタ自動車やパナソニックが支援する有志団体が設立されるなど、実用化に向けて開発が進められています。
バイオ技術(培養組織 / 人工生体組織)
生体組織工学の分野に該当するものになります。
現在、外科治療に用いられる人工臓器は、効果が一時的で、侵襲が大きく、補助できる機能が単一であるという欠点を抱えています。また、臓器移植も、ドナー不足やウイルス感染に加えて、移植後の免疫抑制剤の副作用に問題があります。
そういった中で、細胞の増殖・分化を誘導することによって自己の生体組織を再生修復させ、欠損あるいは荒廃した生体組織や臓器を再生修復するという新しい治療法が試みられています。
(内容参考:京都大学再生医科学研究所の論文)
引用元:シニアのあんしん相談室
培養組織:生物の組織や細胞群を無菌的に取り出し培養・増殖させること。他の生物体に移して育てる生体内培養と、ガラスの器で育てるガラス器内培養があり、通常は後者をさす。発生学・病理学・生理学などの研究に広く利用される。(Weblioより)
再生医療:細胞を利用することによって生体組織を再生したり、臓器機能の代替を行おうとする医療
2006年に京都大学の研究チームによってiPS細胞の存在が発表された影響もあり、再生医療という言葉は有名になりました。
2014年に生体組織工学研究者であり、TEDフェローでもあるニーナ・タンドンが、「人工生体組織の育て方」という発表をしています。
4分程と短く、和訳付きの動画なので、ぜひ見てみてください。
まとめ
全体的にAI、IoT、ロボット、バイオなどに分類されるものが多かったです。技術の発展は目覚ましく、知らない技術もたくさんあったり、夢のような技術がどんどん実用化に近づいています。今後が楽しみですね^^!
今回取り上げた最先端テクノロジーは、起業家・経営者・エンジニアなどに限らず、遅かれ早かれ、今後世界中の全ての人が関わっていくことになるため、早めに知っておくことは有益です。この記事が参考になったと思ったら、ぜひシェアしてくださいー☆
今回の引用元である、ガートナー社の公式プレスリリースはコチラ。
http://gartner.co.jp/press/pdf/pr20180822-01.pdf
※追記:2018/10/11、「ガートナー ハイプサイクル 日本版」がリリースされました。
https://www.gartner.co.jp/press/pdf/pr20181011-01.pdf
※追記:2019/8/30、「ガートナー ハイプサイクル 2019年版」がリリースされました。
https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20190830