2018/1/28(日)に開催された、NEM公式ミートアップin東京の基本編の登壇資料をベースに、NEMの基本について説明します。
スライド画像部分だけを読み繋いでも、概要は理解できるようになっています。
時間の関係で当日説明しきれなかった内容も補足として載せています。
1 ビットコインとNEMの比較
まず、ビットコインとNEMを比較してみましょう。
ビットコインの通貨をBTCと呼ぶのに対し、NEMの通貨はXEMと呼びます。
取引の検証方式については、ビットコインがPoWであるのに対し、NEMはPoI (※詳しくは後述)。
総発行量は、ビットコインが2100万に対し、XEMは約90億です。ビットコインがマイニングにより現在でも少しずつ発行量が増えていっているのに対し、XEMは最初から約90億全てが発行済みです。
時価総額は随時変動しますが、現在、ビットコインは約22兆円、XEMは約1兆円となります。(※2018/1/28頃のレート)
平均的なブロックの生成時間はビットコインが約10分なのに対し、NEMは約1分。NEMはより短時間で、より多くのトランザクションの実行と検証を行うことができます。
ビットコインは2009年1月に最初の論文が公開されたのに対し、NEMは2014年に1月に開発が始まり、同年に開始されたαテスト、βテストを経て、2015/3/31にブロックチェーンプラットフォームNEMが公開されました。
2 新しい経済圏
NEMは、新しい経済圏の創出を目標としてスタートした仮想通貨のプロジェクトです。
NEMには様々な特徴があります。まず、代表的なものを3点挙げます。
1つ目は、NEMがブロックチェーンを用いたアプリケーションのプラットフォームであるということ。これにより、様々な開発者がNEMブロックチェーンを使って、アプリケーションを開発することができます。
2つ目は、NEMはとても優れた性能や機能を持っているということ。高速かつ、高いセキュリティシステムを備えていますし、モザイクやアポスティーユといった様々な機能を備えています。
3つ目は、PoIという独自の取引承認方式を用いていること。これにより、多くの資金を保有する一部の採掘者に報酬が偏りづらくなります。
3 プラットフォーム
それでは、アプリケーションプラットフォームとしてのNEMについて見ていきます。
NEMブロックチェーンの技術はたくさんの活用方法があります。
例えば、身分証明書、医療記録の保存、土地の権利証明、車の登録、IOT、サプライチェーン管理、お客様のソリューションの解説、画像、学歴の証明書、公証等。他にもたくさんあります。
このようにNEMはブロックチェーンを使ったアプリケーションプラットフォームとして、社会の様々なところで使われている既存の仕組みに応用できます。
4 NEMの機能
続いて、NEMの様々な機能について見ていきます。
NEMのほとんどの機能は、NEMのオフィシャル推奨のソフトウェアウォレットである、Nano Walletを使用して実現できます。
NEMのホームページから、PCやスマホにダウンロードできるため、まだの方はぜひやってみてください!
特徴としては、シンプルな画面で、日本語にも対応していて、動きも早いといったことが挙げられます。
各種機能の一覧画面はこのようになっています。
代表的なものを一つずつ説明していきます。
4-1 モザイク
まずは、モザイクについて。モザイクは、NEMを使って作成できる独自アセット(トークン)のことです。
自分でオリジナルの通貨を発行することができます。
独自の通貨を発行できるだけでなく、独自のチケットやWebサイトのアクセス権にも応用できます。
トークンを発行する時に、以下の内容を設定することができます。
- モザイク名:32文字まで
- 説明:最大128文字、日本語OK、所有者が後から変更可能
- 初期供給量(発行数):ロックして後から変更できないようにすることも可能
- 可分性(小数点以下の有無):小数点以下6桁まで設定可能
- 譲渡許可:自由送信を許可するかどうか
- 徴収を要求するかどうか:作ったモザイクの取引に手数料を発生させる機能
- 取得料:10XEM/年
4-2 ネームスペース
次にネームスペースについて。前述のモザイクを使うためには、ネームスペースの取得が必要となります。
ネームスペースとは、インターネットドメインのようなもので、上の画像のように記載できます。
インターネットドメインで言うサブドメインのように、サブネームスペースというものも2階層まで取得可能です。
取得料は、ネームスペースが100XEM/年、サブネームスペースとモザイクは10XEM/年となります。
ネームスペースにはその他のルールもあります。
ネームスペースはレンタルして取得でき、有効期限は1年間となります。1年後には更新が必要です。
※ネームスペースの更新を忘れて誰かに取得されると、サブネームスペースとモザイクも消滅することになるので注意してください。
次に、ネームスペースの名前が違えば、サブネームスペースは他の人と重複しても構いません。
また、最大文字数も決まっています。 (ネームスペースは16文字、サブは64文字)
そして、以下のような、取得できない予約語もあります。
予約語一覧
nem, user, account, org, com, biz, net, edu, mil, gov, info
この予約語は今後増える可能性もあります。
4-3 アポスティーユ
アポスティーユとは、ブロックチェーンを使った公証システムのことです。
ブロックチェーンにファイルの情報とタイムスタンプを刻んだ公証を作成し、ファイルの信頼性を監査できるようにします。
アポスティーユによって、今まで公証を作成していた第三者機関が必要なくなります。
著作物や不動産登記などでは、第三者機関の介入が必須ですが、アポスティーユによってこれが必要なくなります。アポスティーユによって、所有権が移転可能というのも大きなポイントになります。
アポスティーユの応用先として、著作権や不動産登記、特許、借用書といったものが挙げられます。
4-4 マルチシグ
マルチシグとは、XEMやモザイクを共有のウォレットとして扱える機能です。
複数人で1つのウォレットの管理をするため、セキュリティが大幅に向上します。
例えば図のように、3人の管理者の内、2人以上の承認がないと、アカウントにアクセスできないような設定ができます。
CoincheckのNEM流出事件で、Coincheckがマルチシグ対応していなかったことが一因であると話題になりました。
4-5 コミュニティ投票
NEMには投票機能があります。NEM財団だけが決めるのではなく、「みんなで決めよう」ということでこの制度があります。
NEMにはコミュニティファンドが用意されていて、基準を満たしたプロジェクトであれば、ファンド資金を活用することも可能です。
どういう時に投票機能が使われるのでしょうか?
NEMコミュニティー内で良いアイディアのプロジェクトがあれば、投票技術を用い、コミュニティ自身が可否を判断できます。
例えば、以下のようなことがしたい場合です。
- ネムでお寿司が食べられるようにするプロジェクト
- ゼム(XEM)で支払い可能なBARの開店
また、ホワイトリストを作成すると、任意のアカウントアドレスだけが投票に参加できるようにも設定できるため、クローズドな投票も可能です。
NEMのコミュニティ投票は、全員平等に一票ではなく、投票者のPoIスコアも加味されて計算されます。
最近まで、コミュニティ投票の機能はメンテナンス中で使えなくなっていましたが、最新VerのNanoWalletでは、復活しています。
NEMのコミュニティファンドの投票について補足です。
可決には3%以上の加重スコアと65%以上の賛成票が必要です。
「3%以上の加重スコア」は、投票者のPoIに依存する部分になります。(※PoIの説明は後述)
また、可決後にコアチームで80%以上の賛成が必要となります。
4-6 ハーベスティング
次にハーベスティングについて。
ハーベスティングとは、取引を承認し、払われた手数料を受け取ることです。ビットコインでいうマイニングに該当します。PoIの重要度が高いほど報酬を受け取る可能性が上がります。
ハーベスティングは自分でやるローカル型か、スーパーノードと呼ばれるノードに任せる委任型を選択できます。基本的には委任型を選ぶケースが多いです。
ハーベスティングには参加条件があります。
まず、XEMを1万XEM以上保有する必要があります。
そして、取引所で購入したXEMをNanoWalletに送ります。
事前設定を行い、既得バランスが1万XEMを超えたら、ハーベスティングできるようになります。
(※上の画面で、リモートステータスとハーベスティングの箇所が「有効」になっている必要があります。)
ハーベスティングの報酬は金額でいうと微々たるものであることも多いですが、以下のようなケースも…
nemスゴい!
103も頂けるとは!!こりゃいい、下がってるし買い増しぃぃ!!#ハーベスト #nem pic.twitter.com/vTlcKGh099
— 好きな事を仕事に繋げ人@タカシマリョウ (@mrito1952) 2018年1月21日
以上がNanoWalletを使ってできる、NEMの機能紹介になります。
まだ使ったことがない皆さんもぜひ使ってみてください。
5 スーパーノード
続いて、スーパーノードについて。NEMの世界では、ノードは、スーパーノードと通常のノードの2つに分かれます。
スーパーノードとは、NEMの全てのブロックチェーンを保有するノードのことです。
このスーパーノードは非常に重要な役割を持っています。
スーパーノードの一番の目的は、NEMのシステム(ネットワーク)を維持することです。
スーパーノードを稼働し、維持することはNEMというシステムの維持に繋がります。稼働しているスーパーノードに全ての処理を任せることになるため、複数台のスーパーノードが稼働し、負荷を分散させることが重要となります。
また、通常ノードがスーパーノードのブロックチェーン情報を参照しにいきます。
そして、ハーベスティングは委任もできると前述しましたが、通常のノードはスーパーノードにハーベスティングを委任するため、スーパーノードはそれの受け入れを行います。稼働しているスーパーノードが無ければ委任ハーベストは出来ないし、スーパーノードが止まっていたらハーベストが出来ないため、スーパーノードが稼働していることはとても重要です。
このように、スーパーノードはNEMのシステムの中で非常に重要であるため、厳しい条件が与えられています。
まず、300万XEM以上の保有が必要となります。例えば1XEM=50円の場合、1.5億円分のXEMということになります。
悪意のある人がスーパーノードを乱立させてしまった場合、データの改ざんなどに繋がります。それを避けるため、300万XEMというハードルを設けています。
そして、1日4回の性能検査に合格する必要があります。
さらに、コンピュータの常時接続や高速通信環境も必要となってきます。
このように、厳しい条件があることに加え、誰もがハーべスティングできるNEMの場合は、Bitcoin以上にスーパーノードを維持する努力が必要になります。そのためNEMにおいては特別に財源を用意して、スーパーノードを構築するインセンティブの仕組みを用意しています。
Sustainability Fundと呼ばれる、NEMを存続させるためのFundが作成されていて、そのFundの一部がスーパーノード用の報酬としてあてられています。
Fundにプールされてる報酬を、1日4回の性能試験に合格したスーパーノードで山分けします。
現在、1台あたり300XEM/日 程度の報酬となっています。
また、各国毎に、どれくらいのスーパーノードが存在しているかという分布図も見れます。
日本やヨーロッパにたくさんあることがわかります。
現在、世界で約500程のスーパーノードが存在しています。
6 PoI
PoI (Proof of Importance)について説明します。
PoIについて分かるためには、まず、取引の承認方式(コンセンサスアルゴリズム)について理解する必要があります。代表的なものは3つあります。
ビットコインをはじめ、多くの暗号通貨に用いられている、PoW (Proof of work)。
多くの計算処理を行なった人が報酬を得られる仕組みであるため、電気代や、サーバなどの機器代が高額になってしまうというデメリットもあります。
続いて、PoS (Proof of Stake)。
こちらはコインの保有量が多い人が優先して報酬を受ける仕組みのため、PoWのように電気代やサーバなどの機器代が高額になることがないというメリットがあります。
しかし、保有量が多い人(先に多く買った人)がどんどん報酬を得られるため、富が集中してしまいやすいとも言えます。
最後に、PoI (Proof of Importance)について。
こちらはネットワークへの貢献度が高い人が優先して報酬を受ける仕組みとなっています。
「貢献度が高い」状態というのは、具体的には以下の2点になります。
さらに具体的にPoIスコアを上昇させるためには、以下のような方法もあるので、参考にしてみてください。
ただし、送金を同じアドレス宛に何度も繰り返して意図的にPoIを上げようとしても出来ないよう設計されています。
7 まとめ
NEMはブロックチェーンを用いたアプリケーションのプラットフォームであり、とても優れた性能や機能を持っています。NEMのほとんどの機能はNanoWalletで実行できます。
そして、NEMはPoIの仕組みを用いることにより、多くの資金を保有する一部の採掘者に報酬が偏りにくいとも言え、資金の流動を促します。
このように、NEMというのは非常に期待できる仮想通貨のプロジェクトです。
NEMを購入するためには、海外取引所のBinanceがオススメ
当日行われたNEM.io財団副代表のJeffのトークについては、以下の記事をご覧ください。